「あ〜、もう行くぞ・・・はいこれ」

頭を掻きながら、私に水族館のチケットを 渡す。

え!?いや、これはダメ。

「自分のチケット代は、払うよ」

「いや、いいよ。舜を誘ってくれたお礼」

「お礼って・・・私が無理に誘ったのに、申し訳ないよ」

何か考えてる・・・。
なんだろう?

「それじゃあ、初デートの記念に、受け取って?」


柔らかい笑顔でチケットを差し出す。


もぉ〜、その笑顔で言われたら断れないよ〜。
ずるい〜。

「わかった・・・ありがとう」

この様子だと沢・・暁は、絶対折れないと思ったので素直に受け取る事にした。


「良かった。純は頑固だから、受け取ってくれなかったらどうしようかと思った」

と、頭をぽんぽんとされちゃった。

「そ、そんなに頑固じゃないです!」

『純』て呼ばれるのも、頭を撫でられるのも・・・恥ずかしい・・・でも嬉しい。

・・・なんだろうこの気持ち。

前にも同じような事があったような・・・頭に手を置くの癖なのかな?
そっと暁を見上げると

「ん?」

目が合っちゃった・・・やっぱりカッコイイな。

どうしよう目が離せない・・・。
少し見つめ合う形になっちゃって・・・。



「ゴホン」


咳払いでハッとする。


「もしかして、僕お邪魔虫?」

舜君はニヤニヤしながら私達を見てる。


「いちゃいちゃするのは家でやって」



そう言い残し、一人で水族館の入り口に歩いていく。

ハハッ、と照れ臭そうに二人で笑って、舜君の後を追い掛けた。