「まだ部活やってたとき、俺の1番下の弟が熱を出して・・・でも俺、試合があって家を空けなくちゃいけなくてさ・・・両親も仕事だったし、土曜日だったから未那にお願いしたことがあったんだ」

「うん」

「何にも言わずに『いいよー』って言ってくれて・・・。でも、後から知ったんだけど、未那はその日大切な説明会があったらしいんだ、けどそれを出ないで看病してくれて・・・。それで、すげぇ喧嘩になって」

「うん」

「そのときに、「私は翔太とこのまま付き合っていけたらそれでいい。美容師になんてならなくても別にかまわない」って言い出して・・・」

「そうか」

「それを知ってからかな・・・俺が側にいたんじゃ未那の将来をつぶしちゃうんじゃないかって思い始めて・・・」

「それは・・・大げさじゃねぇ?」

「大げさじゃねぇよ!暁考えてみろよ・・・純ちゃんが大事な看護師の説明会に出なくて、舜の面倒見もらって・・・それを後で知ったらどう思うよ?」

「それは・・・」

「俺は、未那の夢をつぶしたくねぇ。・・・・別れないでいることも考えた。出来れば別れたくなんてないからさ」

「おう」

「でも・・・俺甘えてしまうと思うんだ。最初は気をつけると思うけど・・・慣れてくるときっと未那に頼ってしまう・・・あいつの事だから、多少自分のことを犠牲にしても俺の事を1番に考えてくれる・・・・・それじゃ、だめだろ?そのうち俺のことが気になりだして、結局夢を諦めて帰ってきたりするんじゃないかって・・・」

翔太の声が震える。

「俺と別れて・・・ちゃんと夢を実現させて欲しい・・・」

翔太は頭を抱えるようにして俯いた。