大嫌いでも、大好きだから。



握られていない片方の手が、
私の目元に触れた。

涙のあとを拭うように、そっと。


「鳳、くん……っ」

彼を見た。

優し過ぎる微笑みと声に、
心が溶かされていく。


保健室は静かだ。
時計の針が心臓に届くくらい、強く響くだけで。

他は何も聞こえない。