虹の世界

「遅い。」


「ごめん!」


「焼き肉にしようかな〜。」


「焼き肉?せいぜいでコーヒーくらいになんない?」


「コーヒー飲まないもん。じゃ、お好み焼き!」


「このくそ暑いのに?ソーメンにしようぜ。」


「ええ〜。」


俺たちは、なかなかうまくいっている。

ただひとつ、俺の本当の職業を彼女が知らないこと。

『音楽関係』


こんなアバウトな説明。


深くは聞いてこないから、何と無く、そのままにしている。


「スーパーで素麺買おうぜ?」


「やだ…………うどんが、良い。」


「…………焼き肉じゃねぇの?」


「うどん!そこの、ほら、あそこのうどん屋さんがいいな。」


待ち合わせした本屋の前にある小さなうどん屋を指差した。