部屋に入ると、右手にモニターがあった。
カラオケ屋にありがちな背もたれのない正方形のソファが壁にくっつくようにして配置されている。
そしてテーブルの上には、辞書も超えんばかりの分厚いリストが二冊置かれていた。
ビュネはモニタに近いソファに荷物を置いて、部屋の隅のソファに腰かけた。
私も部屋に入ってタバコと携帯電話をテーブルに置いた。
屈みながらビュネを見やると、こっちこっちと隣のソファをポンポン叩いた。
私が隣にすわると、ビュネはリストを私のひざの上において、真剣なまなざしで自分のリストとにらめっこしていた。
「カラオケ、得意なの?」
薄暗い照明にどぎまぎして、私は何かを話さないといけないような気分になっていた。
「うん。好きだけどねー」
相変わらず答えになっていないような答えだが、それでこそビュネだろう。
私はもう何も言わずに、リストをパラパラとめくった。
しばらくすると、ビュネはおもむろにリモコンを手にとって、すばやく番号を入力した。
まもなく音楽が流れ始め、曲名がモニタに表示された。

二人の時~forever~