「覚えてるよ」


彼は煙草に火をつけると、私の大好きな甘く低い声で私を見返した。


「真希、なかなか仕事を覚えないから教えるこっちが大変だった」


空になったワイングラスに、優しく瞳を細めて笑う彼の姿が映る。

私は苦笑いを零しながら、グラスに映った愛しい彼の頬をそっと指先でなぞった。


「あの頃の蒼、無口で無愛想で、第一印象最悪だったんだから」

「あはは」


少し眉尻を下げて困ったように笑う彼を、私は小さく見返した。