そして、僕は今日も走る。


君を追いかけて。


「葉子!忘れ物!」


僕は君の綺麗な後ろ姿に向かい、手に持った定期入れをひらひらとかざす。


「えっ、忘れてた?」


君は僕から定期入れを受け取ると、ペロッと舌を出した。

これでもう何度、君の忘れ物を手に走っただろう。


財布から保険証、大切な会議の資料、そして、ナース服まで。


「そんなそそっかしいところも、好きなんだけどね」


そんな君だから、点滴の種類を間違えたりしないか、少し心配なんだけど。


心の中で呟いて、僕が君の額をコツンと指で小突くと、君は照れて嬉しそうに小さく肩を窄めた。