カチャ、ン―― ドアが閉まる微かな音で目が覚めた。 少し横になるつもりが、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。 君が出て行った部屋は、黄昏色の光と君の残り香で溢れていた。 君の香りがするブランケットを手に、テラスへ出る。 今日は一段と、風が冷たい。 テラスから見える森林公園の緑が、遅い午後の陽射しに包まれ、琥珀色に淡く浮かんでいた。 強い風が吹き、テーブルの上に開かれたままの分厚い本が、パラパラと捲れた。