ふわりと風が舞った。

庭の向こうの森林公園の木々が、ざわりと音を立てた。


仄かな金木犀の香りに僕は目を開けた。


秋の日暮れは早い。

薄らと紫がかった木々の上の空を見上げ、僕はぶるっと身震いをした。


こんな夕暮れに転寝をしていたら、風邪をひいてしまう。


「あ、……」


僕は小さく声を上げた。

君がいなくなったテラス席のテーブルの上には、小さな文庫本がパラパラと風に捲られていた。


風に乗ってひらひらと、一枚の枯れ葉が栞のように、ページの合間に舞い降りた。