張り巡らされた有刺鉄線を乗り越え、振り向きもせず二人で走った。


小さな木の蔭で、躊躇いながらも初めて抱き合ったあの日。

少年はか細い少女の身体を抱き締めながら、傍らに咲いていた小さな白い花を少女の髪に挿した。


いつかここを出て、二人で生きて行こうね――


その一言が、ただ泣ける程嬉しかった。


たった十三年生きて来た中で、いちばん幸せだった、あの日――