少年は生まれてすぐに捨てられた。

彼自身詳しいことは何もわからない。


あるよく晴れた日の朝、孤児院の前にボロ布に包(くる)まれて捨てられていたことを、心ない職員から聞き知らされただけだ。


生まれてすぐに親に捨てられた少年と、十二になる年に母親に捨てられた少女。


少年は忌み嫌われる混血児である少女を愛した。

少女は疎ましがられる特異な性質を持つ少年を愛した。


たった一人愛のない世界に置き去りにされた二人が、お互いを唯一無二の存在とすることに時間は必要としなかった。