パパ――


一人ひもじい思いをして蹲る薄暗い部屋の片隅で、いつしか少女は、顔も名前も知らない父親の面影を思い浮かべるようになっていた。


何故自分には父親が居ないのか――


一度だけ母親にそう訊ねた時、酔って焦点の定まらない母親に酷くぶたれたことを、今でもはっきりと覚えている。


『お前の父親はあたしを捨てて、遠い異国に帰っちまったんだよ!』


そんな母親でも時々、本当に時々、自分を強く抱き締めてくれることがあった。


『お前だけは、いつもあたしの傍に居ておくれ』――


どれだけ罵られ殴られようとも、それでも少女は母親を愛していた。