少女は一人、丘の上を目指していた。


人が手を入れていない自然のままの密林を、下草を掻き分け進む。

湿気を含んだ空気に、少女の額には赤い巻き毛がじとりとまとわり付く。


あと、もう少し――


少女の痩せっぽちな身体は全身傷だらけだった。

必死に走って来た脚をただ前へと動かし、淡くブルーがかったグレーの瞳は、ただ前だけを見据えていた。


下腹部に、鈍い痛みが走る。


行く先を阻むように突き出た枝葉を、奥歯を噛み締め力一杯払う。

弾みで鋭い枝先が、少女の褐色の頬を掠めた。


身体ごと前のめりに大きく脚を踏み出す。

と、突然目の前が拓けた。