彼と出逢って、もう1年半の月日が経つ。

あれは――


一昨年の、秋。





『新製品の発売に当たり、当社の開発を担当している大澤です』


私が勤める会社の小会議室で、私は営業アシスタントとして打ち合わせに同席していた。

打ち合わせを始める前彼の上司にそう紹介をされたのが、彼との最初の出逢いだった。


『宜しくお願いします』


そう深々と頭を下げる彼に、私は何となく好印象を持った。


製品の研究開発をしている人というと、インテリっぽくて堅物な感じの人が多い。

でも彼にはそんな雰囲気は全くなく、落ち着いた口調で、物腰の柔らかな印象を受けた。