ひとしきり激しい雨に打たれながら、どちらからともなくあたしたちは笑った。


その笑い声が合図のように、ほの暗い世界が色を取り戻す。



「これ」


アイツはおもむろに、ナップサックから1冊の本を取り出してあたしに差し出した。


「良かった、濡れなくて」



それは夏休み前、あたしがアイツに貸した本だった。



「こんなの別に、明日学校ででも良かったのに」


「そう言う訳には、いかなくなったからさ」



アイツが言った言葉の意味がわからず、あたしは微かに眉を寄せる。


「俺、今日引っ越すことになったから」