僕の腕の中で泣き続ける彼女を抱き締めたまま、僕は目の前に広がる夕景を見つめる。


この何てことのないどこにでもあるありふれた景色を、僕は生涯、忘れることはないだろう。


「断られたら、どうしようかと思った」


暖かな春の余韻を残したまま、屋根の向こうに夕陽が消える。


この先、僕は。

腕の中で泣き笑いする僕の大切な人を、もう二度と、決して忘れたりはしない。











「記憶の中の夕景」

〜 Fin 〜