ぼんやりと霞みがかってどうしても思い出せない夢をふとした拍子に突然思い出したような、いとも簡単で呆気ない瞬間だった。

けれども僕は、酷く清々しい気分だった。


「はい。宜しく……お願いします」


そう言った彼女の大きな瞳からは、また涙が溢れ出す。


記憶をなくした僕の誰より近くで、来る日も来る日もただ僕を見つめ続けてくれた彼女は、何を想っていたのだろうか。

言い尽くせない感謝の気持ちと、彼女をより深くもっといとおしく思う気持ちが、胸を熱くする。


「まさか同じ場所で、もう一度君にプロポーズするなんて……思ってもみなかった」