僕は無意識に、彼女の名前を呼んでいた。

抱き締める腕に力を込める。


顔を上げ、涙に濡れた彼女の瞳が先刻より大きく開かれる。


「返事を、聞かせてくれないかな」


僕は何故、ここに居るのだろう。

僕は一体、何者なのだろう。


失った記憶の中、忘れられない景色が今ここにあった。

僕の知りたかったことは、全てそこに、あった。