殺風景で無機質な、狭いキッチンの一角。

それ程大きくはないシルバーの2ドア冷蔵庫と、並んで置かれた小さなキッチンボード。


短いスパンで次々と最新モデルに移り変わっていく家電製品が巷に溢れる中、すっかり古い型になってしまった冷蔵庫の、僅かな出っ張り。

その出っ張りとキッチンボードの角にちんまりと納まっている、背の低い私のために彼が買ってくれた小さなプラスチック製の踏み台。


その色鮮やかなオレンジ色が、モノトーンで統一されたこの部屋からどう見ても、浮いているのだけれど。


私はくすっと苦笑いを零すと、春先の、まだ冷たい空気に冷やされた指先でカップを包み込んだ。