「神崎さん……」

心なしか彼女は悲し気に微笑み、身を屈めて僕の顔を覗き込む。

「足の骨折は完治しているんですから、今はリハビリを頑張りましょう?」

真剣な眼差しで、彼女は僕の手を取った。

「焦らなくていいんですよ。無理をしないで、ゆっくりゆっくり……思い出せばいいんですから」


温かな、彼女の手。


ここへ入院してからずっと、彼女は献身的に僕の看護をしてくれていた。

否、それは僕の勝手な思い込みかもしれない。


だがいつしか彼女は、記憶を失った僕の、たった一つの心の支えとなっていた。