「神崎さん、そろそろお部屋に戻りましょうか」


肩にふわりと上着が掛かり、顔を上げた。

白いナース服が淡く橙に染まり、彼女の柔らかな微笑みがより一層優しく僕の目に映る。

僕は彼女に微笑み返し、甍(いらか)の向こうに少しずつ姿を消して行く夕陽を見つめた。


「僕はいつになったら……思い出せるのかな」