「……やっぱり、インスタントよね」


そんな独り言を呟き、私はコーヒーメーカーのスイッチを切る。

そして冷蔵庫からインスタントコーヒーの瓶を取り出すと、マグカップにティースプーン1杯のコーヒーを入れ、保温していたガラスポットのお湯を注ぐ。


コーヒー好きの私は、普段職場以外ではインスタントコーヒーは飲まない。

――だけど、今夜は。


懐かしい春の匂いを胸いっぱいに感じていたくて。


私はゆらり、と湯気の上るマグカップを片手にいつもの私の指定席――

冷蔵庫の隣に、腰を下ろす。