「莉子……話がある」


いつになく神妙な面持ちで口を開いた彼に、私はどきん、として彼の目を見つめ返す。

その余りに真剣な瞳に、私の口からは思わず茶化すような言葉が零れる。


「何、別れ話?」

「莉子。真剣な話だ」


強い口調でそう言われて、私はぐっと息を呑む。


「実は今日……辞令が出たんだ」

「え、……転勤?」


これは本当に――

別れ話、なのかもしれない。


私は低く鼓動する心臓を抑えるように息を止め、彼の言葉の続きを待った。


「今回の、新製品開発の業績が認められて……アメリカの、デトロイトの支店に転勤が決まったよ」


――アメリカ……


デトロイト…………