「莉子、……こんな所で寝てると風邪ひくよ」


耳元に低いハスキーな声が響き、私は重い瞼を持ち上げた。


「あ……お帰り」


そう呟いて、彼のきれいな二重の瞳を膝を抱えたまま見上げる。


「遅くなってごめん。莉子……よっぽどこの場所が好きなんだな。僕が帰って来た時、9割の確率でここで寝てる」


彼はそう言って、優しく苦笑いする。


「ここ、あったかくて気持ちいいのよ」


私はいつもように、もう何十回も口にしているであろう台詞で短く主張して、尚もこの場所に居座り続ける。

そんな私を困ったような優しい瞳で見つめた彼は、仕方ない、といった表情でキッチンの床に腰を下ろした。