さわさわと、無数の花弁を付けた桜の木の枝が揺れる。


僕は袖口で乾いた涙を拭い、ポケットから美咲の母親に手渡された陶の器を取り出した。

白い小さな蓋を開ける。

僕はそれをそっと掌に受け止め、桜の古木の根元に撒いた。


美咲は緩やかな風に乗り僕と桜の木の周りに舞い上がると、春の朧気な霞のように、空へと消えた。