僕は驚いて、母親の顔を見つめた。


「いえ、決してあなたを責めてる訳じゃないのよ。それ程あの子は、ずっと修一くんのことが忘れられなかったのね……それを、伝えたくて」


そうしてふと、彼女は山間に見える町の景色に視線を馳せた。


「美咲が亡くなった日……昼間にね、少しだけ意識が戻った時があってね。あの子、『修ちゃんに会えた』って、とても幸せそうな顔してた」


そう言って彼女は、白いハンカチで目頭を拭い僕に歩み寄った。


「これね……最後に美咲に頼まれたの。あなたに、渡してほしいって」


美咲の母親から手渡されたのは、白い小さな陶の器だった。