彼女は確かに、白いパイプベッドの上で眠っていた。

だがそれは、昼間八坂神社の桜の下で見た美咲の姿とは、全く違っていた。


頭にぐるぐると包帯を巻かれ、頬には痛々しい傷とガーゼが貼り付いている。


「美咲、美咲……」


美咲の身体にすがり付くように泣いているのは、美咲の母親だった。

彼女は僕を見上げた後、何も言わずに美咲の傷だらけの頬にそっと手をあてた。


「ほら、美咲……修一くんが来てくれたよ」


母親の掌が、何度も何度も美咲の頬を撫でる。


けれど美咲は、もう二度とそのきれいな瞳を、開くことはなかった。