「お母さんの墓参りかい?」

「まぁ、……そんなとこかな」

「そうかい、そうかい」


頷きながら優しく笑う懐かしい笑顔は昔のままに、目尻に口元に刻まれた年輪にまた、僕は十年という時の流れを感じていた。


「そういやぁ修ちゃん、あんた市民病院には行ったかい?」


おばさんの表情が俄かに曇る。


「いえ……」


市民病院と聞いて、僕は美咲の母親のことを思い出していた。


「あんた、坂元さんちの美咲ちゃんと仲が良かっただろう?修ちゃん、今直ぐ行っておやり」


眉を顰めくぐもった声で話すおばさんに、僕は良くない事態を想像した。


「美咲んちのおばさん……そんなに悪いの?」

「違うよ、美咲ちゃんが入院してるんだよ」


僕は耳を疑った。


「え、でもさっき……」

「こんなところで立ち話してるよりも、とにかく病院に行っといで。急いで!」


僕の言葉を遮ったおばさんに急かされ、訳もわからないまま僕は畦道を走り出していた。