僕は懐かしい匂いがする古ぼけた家を後にした。

錆びた門扉を閉め、我が家を振り返る。


裏切り、悲しみ、嫌悪、孤独。

そして、人を想う苦しみ。


良くも悪くも、過ぎてしまえばそれは過去の思い出のひとつに過ぎない。

そして、人は誰も未来の為に今を生きている。


母が亡くなって、十二年。


僕は――

父を許せたのだろうか。


父が今もまだ、母の編んだベストを着ていることに何故だか胸が痛んだ。