その日僕は母の墓参りをした後、どうしようか迷った末実家に立ち寄った。


数年ぶりに見上げる実家の外壁はひび割れてあちこちに染みができ、知らず知らずのうちに過ぎ去った長い年月を、静かに物語っていた。


「……ただいま」


陽射しが陰り始めた遅い午後の縁側で、父は擦り切れた毛糸のベストを羽織り背中を丸めて座っていた。

それは、母が父の為に編んだ物だった。


「ああ、……帰ったのか」


僅かに振り返った父の背中が、昔より小さく見えた。


父は――

本当に、母のことを愛していたのだろうか。


酔って夜中に、啜り泣く母の身体に手を挙げる父の姿が甦る。


母は――

余所に女を作った父を、最期まで愛していたのだろうか。



“お父さんのこと、……許してあげてね――”