俯いたまま、美咲が桜の木に凭れ掛かる。


「私……」


潤んだ瞳が、僕を見上げた。


「ずっとずっと……子供の頃からね、修ちゃんのことが……好きだったの」


信じられなかった。

誰にでも優しくて可愛い美咲は、小さな頃から皆の人気者で、勉強もできて。

中学に上がってからは、ますますきれいになっていく美咲が眩しくて、だけど目を逸らせなくて。

加速度を増して彼女に惹かれていく自分が止められず、どうしようもない戸惑いと躊躇いを感じていた僕は――

ただの臆病者だったんだ。


――だけど。

ずっとずっと、もう長い間閉じ込めてきた想いを、今更どうすればいいのか僕にはわからなかった。

今日、この町を出て行く、僕には。


「……ごめん」


臆病で、自分の未来にさえ確信が持てない僕の口からは、そんな言葉が零れ落ちていた。