ホテルのBarは、あっというまに二人を大人の世界に引き込んでいく。

自然な成り行きでたどり着いたホテルの部屋。

夕貴の荷物が綺麗に整理され、明日帰るのだという現実が気分を高揚させた。

自然に……

本当に自然に抱き締めた。

なのに、それから先、心が動こうとしなかった。


胸の中で、小さな溜め息が落ちる。


「やっぱり駄目だね。」


「え?」


「もしかしたら……なんて思ったけどさ、相手間違っちゃってる気がする。心が違うっていうか………」


同じことを考えていた。

夕貴は笑ってコーヒーを煎れた。


「備え付けのですがどうぞ。」


そして、そのまま朝まで話した。

あの頃の幼い恋。

仕事の愚痴や、やりがい。

そして、今の、恋。