私はそっと、母さんの手帳を開く。

 そこには家族の思い出がいっぱい詰まっていた。

 今の私には涙がでるくらいの。

 この手帳を愛おしいと思った。

 そんな想いも、嫌いじゃなかった。

 1998年2月16日

 兎癒の1歳の誕生日!!

 なかなか忙しくてお祝いができなかったけれど

 愁姉が可愛がってたみたい!!

 すごくうれしかった。

 

 そんなことが書かれてあった。

 愁姉・・・・うれしかった。

 でも、その気持ちも空気も全て覆すような事実が待っていた。

 1997年2月16日

 赤ちゃんを拾った。

 



 拾った?

 私は子供じゃない?

 私は誰の子供?

 なんで?なんで?

 え・・・・・・・・・・

 そんな・・

 誰も言わなかった。

 誰も告げなかった

 赤ちゃん、私は家族じゃない?

 本当の家族じゃない?

 私は誰?

 よそ者?

 ああ・・・・・

 分かった気がする。

 あの時から12年。

 「兎癒」っていう人形はいらないんだ。

 最近親が私を信じない・・・・・・・

 圭兄も芽衣姉も愁姉も

 由樹も棗も・・・
 
 それは、いらないからなんだね。

 いらないものはこの家からでていこうか。

 欲しかったな。偽りでも「愛」

 優しい嘘ほど、苦しい痛み。

 私の目から一つの粒

 心が割れる音がする

 そう思ったんだ