雨のあとに

『分かった。では上に何か羽織ってこい、その格好で部屋を出ると風邪を引く。』

ディーンに言われるがままにイスに掛けてあったコートを着てレインを起こさないように静かに扉を閉めて部屋を出た。

ディーンの部屋に入ると机の上にはさっきまで仕事をしていた跡が残っていた。ディーンはソファーにあたしを座らせて暖炉に火をつけながら話を始めた。

『体の方は大丈夫か?』

『え?うん、なんともないよ。』

『そうか、良かった。』

ディーンはゆっくりと歩いてきてあたしの横に座ってあたしの髪を撫でた。

『ど、どうしたの?怒ってるようには見えないけど…何か変だよ?』

『そうか?そうかもしれんな。私は自分が思っている以上に独占欲が強いらしい、貴様が側にいなくなってしまうと不安で堪らなかった。王だから城を離れるな、というのはただの口実だ。レインや他のことなど気にするな。チキュウとやらに行くのを止めてくれないか?』

『ええっ!?それホンキで言ってるの?』

『ああ。』

ジョーダンでしょ?って思ったけど、ディーンの瞳は真剣だった。

『ゴメン。あたし、知りたいの。自分がこの世界とどんな関係があるのかとかお父さんの事とかたくさん聞きたいことがあるんだ。』

『そうか・・・ならば止めるのはやめておこう。』

ディーンはあっさりと了解してくれた。

『いいの?』

『ああ、少し聞いてみたかっただけだ。気にするな。』

ウソ。ディーンは本当に行って欲しくないんだ。これ以上言わないのはあたしの為。あたしを困らせたくないから我慢してくれてるんだ。この人はあたしの気持ちをちゃん理解してくれている、考えてくれている。