雨のあとに

『・・・メ・・・ア・・・アメ!!』

あたしを呼ぶレインの声で目が覚めた。見渡してみると見覚えのある光景が目に映る。あれからあたしは宿屋に運ばれたみたいだった。

泣きそうなレインの頭を撫でてあげると、レインは泣きながら抱きついて離れてくれなくなった。しばらくしてシーバーが扉の向こうからやってきた。

『陛下、お目覚めになりましたか。』

『うん、シーバーこそケガは大丈夫なの?』

『はい、陛下のおかげですっかりキズも塞がりました。それより、ずっと気になっていたのですがこちらの陛下にそっくりな方はどなたでしょうか?』

シーバーは子供のように泣きじゃくるレインをどうしたら良いのか分からない様子だった。

『この子はレイン。どうして似てるのかも知らないし、会うのも初めてだけどとても良い子よ。』

それからレインのことを含めて昨日のことをシーバーに話した。自分でもなにがなんだか分かんない、あたしとレインが似てることもレディア達のことも。

だけど、何かが起こってるいるのは分かる。あたしの運命を大きく変える大変なことが。そしてこれにはきっとお父さんも関わっている。

部屋の外からざわめきが聞こえて窓から外を眺めてみると宿屋の前には大勢の人が集まっていた。どうやらあたしがマサルドリアの女王だと街の人たちにバレて大騒ぎになっているみたい。その騒ぎを聞きつけてディーンたちがやってきてお城に連れ戻されたのは言うまでもない。

けど、あたしの脱走についてはお咎めはなかった。なぜならレインの存在に驚いていたのと、もう一つの鍵が大きな問題になったからだ。

とりあえずマサルドリアに戻ってから考えることにしようということになってお城に帰ることになったんだけど…帰り道はホントに気が重かった。

馬車に乗ったのはあたしとレイン、それにディーン。ディーンは今まで見たことないほど怖い顔で怒ってる。一言も喋らずキレてますオーラ全開で睨んでくる。それに怒ったディーンにレインは怯えて馬車の中には気まずい空気が充満してる。

『あの、ゴメンね?勝手にお城を出たこと怒ってる・・・よね。だけどさ・・・』

余りの気まずさに耐えきれず、なるべく明るくディーンに事情を説明しようとしたけど、あたしの言葉はディーンの一度の足踏みにかき消された。