雨のあとに

ディーンがあたしを殴るはずがなく、仕方ないと言って腕を下ろした。

『貴様の顔は見たくない、さっさとこの地を去れ。』

『そんなのダメ!シーバーはマサルドリアで暮らすんだから。』

『な、何だと!?こいつは魔族を裏切って人間の所に行ったのだぞ。その様な者をマサルドリアに置くことはできない。』

『あたしを助けてくれても?シーバーがいたからあたしはマサルドリアに帰ってこれたんだよ。国王の恩人を追い返すの?マサルドリアはそんな恩知らずな国なの?』

『う、くっ・・・しかしだな。こいつは裏切り者なのだ。簡単に受け入れることはできん。』

『あたしが良いって言ってるんだよ、女王の命令でもダメってこと。』

ディーンと言い合いが始まって、シーバーがオロオロしだした時にタイミングよくレオンが駆けつけた。

『まあまあ、ディーンもアメも落ち着いて。せっかくアメが帰ってきたんだ、城のみんなにアメの元気な姿を見せて安心させてやらないと。シルバーのことは城に戻ってから皆で話し合ってから決めたらいいじゃないか。ほら、民も困っているみたいだし。』

ディーンは勝手にしろと言い放ってお城に帰っていった。シーバーは不安そうな顔をしてレオンとあたしに謝った。

『申し訳ありません。私なんかの為に閣下の手を煩わせてしまって。陛下にも婚約者との間にキズをつけてしまい、申し訳ありません。』

『気にするな、アメとディーンはいつもああだから。ケンカしている様で仲がいいんだ。』

『レオン!いらないこと言わないで。シーバーもいちいち謝らなくていいから、さっさと行くよ。』

クスクス笑うレオンとオロオロするシーバーを引っ張ってお城に帰った。せっかく帰ってきたのにディーンとケンカするなんて・・・本っ当にディーンは頭が固いんだから。