雨のあとに

これは夢?あたしは暗くて寒い部屋の隅にうずくまっている。見たこともない部屋なんだけどずっといる気がする。今のあたしはスゴく寂しくて怖くてひもじくて、早くここから出たいのにどうしたらいいのか分からない。あたしは目の前にある大きくて錆びついた扉が開くのをずっと待っていた…

目が覚めるとあたしは知らない金髪に金の瞳をした色黒の美形男にキスされていた。飛び起きてその男の頬に思いっきり平手打ちをおみまいした。

『何すんのよ、この痴漢!』

男は静かに立ち上がって睨んで口を開いた。

『魔族ってのは命の恩人にビンタを食らわすのが礼儀なのか?凶暴な種族だな。』

そういえばあたし溺れたんだっけ。ということは今のはキスじゃなくて人工呼吸?

『ごめんなさい!あたし勘違いしちゃって・・・。』

あたしは勘違いに顔を赤くしながら頭を下げて謝った。

『俺が無理やり口づけをしたと思ったのか?一応親切で助けたんだけどな。』

『だからゴメンって言ったでしょ。いきなりキスされてたんだから誰だって驚くわよ。』

『まぁいいや、許してやるよ。それより早く逃げた方がいいぜ?ここは人間の領土カカロンだ。双黒の魔女には危険な場所じゃないのか?』

え?あたし人間の国に漂着しちゃったの!?

『あなたは人間?ならどうしてあたしを助けてくれたの?』

男はジロジロとあたしを見回してあたしの質問に答えず、自己紹介を始めた。

『俺はアレクセイ・フォン・カカロニア。アレクでいい。お前は?』

『え?ああ、名前?北浦雨、アメでいいよ。』

『アメ、コレ被ってろ。』

アレクは着ていたマントをあたしに頭から被せた。マントの隙間から数人の兵士がやって来るのが見えた。ヤバッ!!もしかしてあたしを捕まえに?直ぐにマントで頭と顔を隠して俯いた。

『殿下、困ります。お一人で出歩かれては。賊にでも襲われたらどうするのですか?』

兵士の一人がアレクに文句を言いながら近づいてきた。