雨のあとに

『ユビキリとはなんだ?』

『指切りってこっちの世界には無いんだ。簡単に言えば約束の誓いみたいなものよ。こうやって、小指を出して・・・』

ディーンさんの右手を引っ張り出し小指を立たせて、あたしの小指と絡ませてお約束の歌を唄った。

『指切りげんまん嘘ついたら針千本飲ます指切った♪』

そして小指を離した後、ディーンさんが真剣な顔で言った。

『誓いを破れば針を飲まされるのか?貴様の世界は恐ろしい所だな。』

『ぷっ、あははは。違う違う、本当に飲むんじゃないの。それぐらいの気持ちで約束を守ってってこと。』

『なるほど、そういうことか。』

『じゃあ、あたしもう戻るね。』

『もう行くのか?』

『もう夜だし。あ、もしかしてこのまま居て欲しい?けど、あたしまだ心の準備が・・・』

『ば、馬鹿者!何を言ってるのだ。そういう意味ではない!!』

『冗談よ、冗談。じゃあディーンさん、おやすみなさい。』

扉を開けて出て行こうしたら、呼び止められた。

『ちょっと、待て。』

『何?やっぱり居て欲しい?』

『その冗談はやめろ。そうではなくてだな、貴様は国王なのだから我々に敬語を使う必要は無い。カーダが気にしていたから一応伝えておく・・・私のこともディーンでいい。』

照れながら言うディーンをちょっと可愛いと思った。

『おやすみ、ディーン。』

そう言って部屋から出た。ディーンって口下手なだけで優しいんだ。あれ?そういえば言われる前から途中でタメ口になってたかも、まっいっか。あたしは真っ直ぐ部屋に戻って布団に入った。

それから何日か過ぎて、人間達には忠告の手紙を出すことで解決したと聞いて一安心した。ディーン、約束守ってくれたんだ。