クリスが居なくなってからも体の震えが止まらず、ディーンの腕の中で震えていた。

『アメ、急いでマサルドリアに戻るぞ。』

『なん…で?』

『奴がマサルドリアに行ったとしたらどうなる?レインの時のように…いや、あの時以上の惨事になるだろう。』

『嫌よ、またクリスに会うなんて絶対に嫌。』

ディーンから突き放す様に離れ、小さく独りで震えた。

『聞け、奴の魔力は計り知れん。だが、魔王の力と私達全員で立ち向かえば何とかなるかもしれん。頼む、一緒にクリスと戦ってくれ。』

何て言ったの?戦う?あたしが?クリスと?絶対に嫌!!あたしは何も言えずに黙ってうずくまった。

『…すまない、無理を言ってしまった。アメに戦えなどと、私もどうかしていた。だが、私は行かなければならない。』

ディーンはそっとあたしの頭を撫でて立ち上がって、歩き出した。ディーンは既にボロボロだった。体中のアチコチに傷がつき、片足を引きずりながら歩いている。

ダメよ、そんな体で行ったら殺される。ううん、傷がなくたって殺されるわ。そうよ、殺されるって分かっていながらディーンを行かせるの?

違う、そうじゃない。このまま何もしなかったらディーンだけじゃなく、お父さんもお城のみんなも世界中の人が居なくなってしまう。

そんなの嫌だ。あたしはもう分かっていた、誰かが居なくなる苦しみを。もう誰も失いたくない、ディーンと離れたくない。

震える手に噛みつき、自分の目を覚まさせた。直ぐに立ち上がって、ゆっくり歩いているディーンの背中に抱きついた。

『ごめんなさい、あたしも一緒に連れて行って。』

『良いのか?死ぬかもしれないのだぞ?』

『分かってる。だけど、みんなが傷つく方が怖いもの。』

『また目の前で誰かが死ぬかもしれない。』

『あたしが守る。』

治癒術を使ってディーンの体を完全に回復させた。ディーンは一瞬で傷が治った事に少し驚いていたけど、目をつむって微笑んだ。その後、真剣な顔をして言ってくれた。

『何があってもアメは私が守ってみせる。』

それから、あたし達は何かを誓い合う様にそっと唇を重ねた。