軍隊の中には色んな国旗が見え、国境にいるのはマサルドリアの隣国だけでなく、遠い国の人間も来ているようだった。どうしよう?こんなに人間がいたらマサルドリアに入るどころか国境に近付くこともできない。

そういえば、確か昔のマサルドリア国王の日記にマサルドリアの中央広場の井戸から地下水路が続いていて国の外まで続いているのと書いていたのを思い出した。地図も載っていたから大体の場所も分かると思う。

国境をぐるーっと大きく回って、マサルドリアの海岸沿いまでやってきた。水路の入口は海の中に潜り、岸壁の下の方から入らないといけなかった。

とにかく息を深く吸って息を止め、海の中に飛び込んだ。どんどん潜って50メートルぐらい潜った所に入口はあった。

入口に入っても海水が水路を満たしていて、息継ぎをすることができない。マズい、このままじゃ息が続かない。そうだ、風の魔術を使えば何とかなるかもしれない。

自分の周りに空気の塊を作って呼吸ができるようにとイメージをしながら魔力を使った。けれど、イメージの何倍もの風が巻き起こり、海水は外に押し出され水路には海水はなくなった。

『なんかイメージと違うけど結果オーライってことかな。』

海水の無くなった水路を歩いていくと、しばらくして広い空洞に辿り着いた。アチコチに穴が空いていて、そこから淡水が流れ込んでいる。

空洞の下の方を見ると、また横穴が続いているみたいだった。横穴まで降りていき、そこからまた水路を進み始めた。

黙々と水路を歩き続けていると、さっきよりも水の量が増えているのに気付いた。さっきは足の裏に水が付く程度だったのに、今は足首辺りまで増えている。

そして後ろの方からドドドドっという音が聞こえてくる。薄暗い水路を目を凝らして見ていると、後ろから凄い勢いで水が流れてきた。

ウソでしょっ!?さっき魔術で抑えていた水が押し戻されてきたんだ。あたしは必死で走ったけど流石に水の勢いには勝てず、水に巻き込まれどんどん奥に流されていった。

体は縦横と色んな方向に回って何がどうなっているのか分からなくなった。