先生のビー玉

彼女がいなくなった準備室。

「毎日、自制心を保つのが…大変だ」

部屋のスペアーキーを受け取った手のひらを見て自分を見た表情を思い出しながらため息をついた。

「いや、仕事だ仕事。
っていうより、俺も腹減った!」

そう言い、パソコンに向かう彼だった。


一方、走る佳奈。
自然と顔がほころぶ。

「カギ…貰っちゃった」

思わず立ち止まってもう一度ポケットの中のカギを眺める。
またもや顔がほころぶ。

とその時である。
携帯が鳴った。

「ヤバイッ貴子だ。
あ、今そっちに向かってるっ」

「お~そ~い~」

「ごめんっ」

バタバタと走って駐輪場へ向かった。
チャリンコに寄りかかっている貴子。
佳奈を見つけると…

「男が出来たからって、親友を二の次にするなぁ~」

と叫んでいた。

「た、たかこっ!声、響くっ」

あわてて貴子に駆け寄る佳奈。

「おなかすいたのっ!恭子にも連絡したからっ。
ホレ、後ろに乗れっ」

「私もチャリに乗るよ」

「佳奈は遅いからっ」

ブスッとする佳奈を無理やり後ろに乗せると、超特急で学校を飛び出したのだった。
貴子にしがみつきながら…

「ぐふふ…」

笑う佳奈。

「佳奈、気持ち悪いっ!」

貴子が叫んでいた。