11月も中旬を過ぎると周りが浮足立っているように感じる。

「クリスマスだもんねぇ」

と恭子が呟く。

「そうそう、うちら受験生には関係ないけどさ」

と貴子が体育大会が終わって行き始めた予備校の参考書を眺めながら言う。
遅すぎやしないか?
と思うのだが…体育大会が終わらないと集中できないというなんとも彼女らしい考えだ。
恭子は…
1次試験が合格し、なんとか親のコネで役場の事務が決定した。

「なんか渡すの?」

と佳奈に質問する恭子。

「え?誰に?」

いきなりの質問に思わず答えた佳奈に…

「ばぁかっ、決まってるでしょうが。
あいつよあいつ」

廊下から見える彼を指さす貴子。

「えっ?なにも考えてないっていうか…
あげたら迷惑でしょ?」

あわてて言う佳奈に、二人は…

「迷惑じゃないっ、今から考えなさい」

と言われ…

「というか、考えてるんでしょ?
とりあえずは」

と貴子に鋭いところを突かれる佳奈。
すると、苦笑いをしつつ…

コクリ

と頷く佳奈。

「やっぱりねぇ~
って、何をあげるの?」

恭子に言われた佳奈。
躊躇しつつ…

トートバックの奥底に収まっている巾着袋を出す。