「あ、あぁ…
今は、貴子に付き合って図書館で勉強してます。
引退したのに部活に行っても申し訳なくて…」

佳奈が言うと、

「そんなことあるか。
近藤に聞いたぞ…安藤と何かあったんだろ?」

と彼。

「い、いえ、何もないですよ。
ただ、由梨に色々言わないでほしいと言ったくらいですから」

佳奈が言う。
すべてを言う必要もない。
言ってどうなるわけでもない。

なんて思ったからである。
すると…

「用事がないのであれば、顔を見せてやってくれ」

と呟くように言ったのだ。

「え?」

聞き返すと…

「どうもな、どうもお前が来ないといまいちなんだよな。
締まらないっていうかなんていうか…
ま、そういうことだ。
じゃ、ちゃんと足の治療しろよ」

そう言い、去って行った。

「…」

思いがけない一言に何も言えず彼の後姿を眺める佳奈。

「やっぱりねぇ~
佳奈、部活に行きな」

一部始終を見ていたのか…貴子がそう言ったのだ。

「…見てた?」

「しっかり」

「…た~か~こぉ~」

「いや~んっ。
なんだか良い感じじゃない~っ」

二人、しばらくそこで騒いでいた。