先生のビー玉

一方、体育館に残された絵里。
しばらく放心状態だ。

「安藤、なにボケッと突っ立ってんだ?
さっさと着替えたんなら運動場へ行けっ」

ちょうど体育館に様子を見に来た矢部が彼女に怒鳴った。
あわてて外に出て行く絵里。

「神田も堪忍袋の緒が切れたか」

一部始終を聞いていたのか…
矢部が絵里の後姿を見て呟いた。


「何様のつもりよ。
どういうつもりで私に意見するわけ?」

外に出、ふつふつと怒りが込み上げてきたのか…
ブツブツと文句を言いだす絵里。

とその時、

「田村先生、驚きましたよ」

池田の声が聞こえていた。
彼の名前が聞こえてきたので、ふと立ち止まる絵里。

「あぁ、ちょうど視線の先に足を気にしてる戸田がいたんですよ。
そしたら、ガラスの破片を踏んでましてね…
そのままにしてたらひどくなるかなと思って、つい」

笑いながら話す彼。

「そうでしたか。
あの時の戸田の顔。
ゆでダコでしたよ」

と笑う池田。

「あはは…
ちょっと刺激が強すぎましたかね
まぁでも、あいつは我慢しますからね。
無理にでも連れていて正解でしたよ」

彼も笑っていた。
その会話からも楽しそうに答える彼の声に…

「…どうして佳奈ばっかり?」

嫉妬する絵里だった。