どうやら彼女は自分に気付いていない。
彼と池田の席は、一つ通路を空けてある。
池田の周りは雑然としているので、それに必死で隠れていると…

「戸田、挙動不審だぞ。
ほら、これに必要事項を記入!
今日中に提出しないといけないんだからな」

そう言われ、頭を小突かれる。
パッとこちらに視線が刺さる。

「何かやったの?佳奈」

池田の佳奈に対する仕打ちを見て言う絵里。
きっとなにかしでかしたと思っているのだろう。

「あぁ、安藤か。
いや、なんでもないんだよ。
ほらっ、さっさと書けっ」

「わかりましたっ」

彼女の突き刺さるような視線を感じつつ記入していく。

「あ、田村先生。
ちょっと事務所に行ってきますけど…」

佳奈を見る池田。

「あ、分かりました。
しばらくここにいますよ」

と言うと、

「戸田、分からないことがあったら田村先生に聞けよ」

「わかりました」

バタバタと出て行く池田だった。