川口さんは傍らに立つ男性に
「郁弥の……」と小声で言った
気まずくて、目を伏せ
男性に軽く頭を下げる
「ああ」と何度かうなずき
男性もオレに頭を下げて
「じゃあ」と席を外そうとした
「いえ、私すぐ帰りますから」
日を改めよう
それに、何となくは理解できた
ほんの一部かも知れない
だけど…………
「今日、郁弥は」
川口さんが遠慮がちに訊ねた
「あ、いや、すみません
私一人で……………」
不自然きわまりない
お見舞いなら
郁弥を伴うべきなのに
「ご迷惑、かけてるでしょう」
いえ、そんなことは
そう言おうと口を開いた時
「本当に気難しい子で
私とも口をきかないんで
三島さんも手を焼いてるんじゃ」
「…………」
郁弥の笑顔が浮かんだ
青波の世話をする
屈託のない笑顔
川口さんは
全く別の子の話を
してるんじゃないのか?
気難しい子
それは郁弥のイメージから
かけ離れてた



