部屋のクローゼットを開けて、ボストンバッグを出した。
その中に、クローゼットにかけてあった服を乱暴に入れていく。
チェストの中の服や下着も入れていく。
制服も教科書も……。
この部屋にあるもの。
必要なものを詰めていく。
この家には私の居場所はない。
もうこの家には帰らない――。
ねぇ、咲哉さん?
アナタのところに逃げてもいいよね?
私はパンパンに詰まったボストンバッグを持って部屋を出た。
階段を下りて、玄関に行く。
「穗乃香お嬢様……」
お手伝いさんが心配そうな顔で私を見た。
「………………」
私は無言のまま靴を履いた。
そして、振り返り、お手伝いさんを見る。
「……今まで……ありがとう……」
私は泣きながら笑顔でそう言って、玄関を開けて外に出た。



