「そんなことないよ……」
咲哉さんは私を抱きしめたまま、耳元でそう囁いた。
「咲哉さん……」
「穂乃ちゃん……好きになってくれて、ありがとう……」
咲哉さんは更に私を強くギュッと抱きしめた。
彼氏に振られたばかりなの私。
翔に振られて泣いてたくせに、咲哉さんに抱きしめられ、咲哉さんのことを好きになる女なのに……。
それなのに咲哉さんは、そんな私でも好きと言ってくれた。
アナタは、どうしてそんなに優しいの?
「穂乃ちゃん……好きだよ……」
「私も……」
咲哉さんが好き……。
見つめ合い、唇を重ね合う。
深い深いキス――。
静かなリビングの中に、舌を絡め合う音と、吐息が混ざり合う音が響いていた。



