「咲哉さん……」
「ん?」
咲哉さんには、もう嘘がつけない……。
「暗い箱の外に出るには……どうしたらいいんだろう……」
私はマグカップを見つめたまま呟くように言った。
「えっ?」
優太が生まれた時から……私は暗い箱の中にいたんだ……。
「親が心配性とか……嘘なの……」
私は目線をマグカップに落としたまま言った。
嘘をついていた後ろめたさから咲哉さんの顔が見れなかった。
「私……家族に必要とされてない人間で……家では孤独で……いつも暗い箱の中にいて……本当は箱の外に出て光のある場所へ行きたいのに…………」
ねぇ、咲哉さん?
どうしたら……暗い箱から出られるのかな……。



