駅前に行くと、柴本がいるのが見えた。
紺のスーツを着て立っている。
小太りな体型。
小さな目に黒縁のメガネ。
ムースをつけているのか、スプレーなのか、ベタついてる白髪混じり髪。
とても紳士には見えない。
気持ち悪いオヤジ。
それでも私は笑顔で手を振って、柴本に近づく。
周りから見たら、父親と娘にしか見えないと思う。
「ゴメン、待った?」
柴本に笑顔でそう言った。
「いや、俺もさっき来たとこだから。行こうか?」
「うん」
私と柴本は並んで駅前を出た。
私と柴本は手を繋いだり、腕を組んだりしては歩かない。
そのことは柴本もわかってるみたい。



